私の養殖日記2002/10-12
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●12/24 KFSの養魚場はレインボーの発眼卵を購入して、ふ化させるところから、養殖が始まる。発眼卵は購入後4−5日でふ化して、さらに12−13日で、さいのうが半分位、吸収され、餌付け池に放流することができる。つまり発眼卵到着後、17−18日でKFSから、私が住む、韮山町の養魚場に移して、当日から餌付け作業が、始まる。卵の業者から12月初めに電話があり、14日に、こちらに発眼卵を送るという。はいはい、OKと言って、しばらくして気が付いた。14日から17日目なら、大晦日、18日目なら元旦じゃあないか。私は、どうせ?年末年始も仕事だから、構わないが、一人では移動できないので困ったことではある。

順調に行けば、ちょうど一年後の今頃には、30cm前後に育って、放流されることになる。


●12/21 その翌日、ちっちゃな食堂で昼飯を食べていたら、そこのオーナーが日系人で、話がはずんだ。で、ぜひ夕飯を食べに来なさい、何を食べたい?と聞くので、冗談にニジマスと言ったら、OKとのこと。旧市街にある立派な家を訪ねると奥さんが、ニジマスをムニエルにしてくれた。ペルーにニジマスの養魚場があることは聞いていていたが、そんなに簡単に手に入るのだろうか・・・そんな話もしたような気がするが忘れてしまった。例えば、日本の地方都市で普通の家庭に突然お邪魔して、ニジマスが食べたい、と言ったら、どうなるだろうか。インターネットで、お買い物じゃ間に合わないし。で、急遽、ニジマスの養魚場を訪ねてみることにした。

この、おじちゃんの話では、行ったことは無いがワンカーヨという町に大きな養魚場があるということだ。リマから8時間、バスに乗って、とりあえずワンカーヨに行ってみた。養魚場の住所も判らないので無理かな?と思ったら、なぜか、みんな良く知っていて、さらにボロバスに数時間、揺られてたどり着いた。養魚場には、ペルー人しかいなくて、言葉も通じないがヨ テンゴ ラ ミスモ トラバホ、(私も同じ仕事をしている)を連発して、同業者であることは理解してもらえた。ここは標高3800m、酸素は平地の70%しかない。養殖池の溶存酸素量は、どうなっているのだろ?レインボーは高山病にならないのか? などギモンがいっぱいあったが、質問ができない。もちろん答えられても判らない。近くにあった、マスの家みたいなところで、レインボーを食べた。

すっかり視察をした気分で、ワンカーヨに戻り、軽くサンドイッチでもと思ったら、中に入っていた異物?で奥歯が割れてしまった。すごく痛くて口を閉じるのも辛い・・・・えー!このペルーの山奥で歯医者に行くの・・・?クイのたたりじゃ。
まあ、そんな話は、いずれ。


●12/20 インカ帝国の古都クスコは標高が3500m程ある。ボリビアのラパス3850mで既に、たっぷりと高山病の洗礼を受けていた私は、薄い空気になすっかり慣れていて、元気だった。
ここで 日本の青年と会った・・・といっても私も25才だったのだが。ペルーのリマで日系企業に勤めていると彼は、スペイン語が上手だった。いっしょにメシを食おう、ということでクスコでは人気のレストランに入った。ペルーに2年もいる、という彼に注文は任せた。この辺りの名物料理を注文した、他のメニューの3倍くらいするので、期待できる。1人前を2人で食べよう、ということになった。で、テーブルに登場したのが、クイ、であった。

ネズミだ!私は驚いてヤツの顔を見たが、私より、驚いている・・・・なんだ、知らなかったのかよ!
ウシだってブタだって、ネズミが大きくなったようなモノじゃんか・・・と自分に言い聞かせるが、ダメだ。腹のところを切ると何が出てくるんだろ。結局、フォルクローレの生演奏の中、ネズミとのにらめっこが続く。TV番組みたく、ギャラがかかってれば何とかして食べるのだろうけど、私の意志とは、無関係にコイツは目の前の皿に乗っかっている。足や顔が妙に生々しい。外国人が驚く、タイの活造りって、こんなイメージなんだろうか。
翌日、ヤツが私の部屋にやってきた。青いカオをしている。クイに当たったか? 実は、バッグをナイフ?で切られて、有り金全部、パスポート、航空券を盗られたたという。実はこの日、私も、引ったくりに遭い、バッグは死守したものの、手にケガをした。後で聞いた話によると、クスコはけっこうヤバいらしい。リマまでの飛行機代他、100$を立て替えて上げた。1980年、南米には、まだバックパッカーが少なかった頃の話だ。
クイ、というのがネズミではなくモルモットのことだ、と知ったのは何年も後のことだった。

チチカカ湖では水辺に生えているアシで浮島やボートを作って生活している。見学に行ってみると、1坪ほどの浮島を作って、モルモットを飼っていた。まわりは水だから逃げられないし。あれって、養殖してたんだな。
この後、レインボーの話になるので、あえて養殖日記に書きました。


●12/18 実は取りの被害で恐ろしいのはサカナを食われることばかりではない。
昨日も書いたようにゴイサギは、たくさん食べて吐く。ゴイサギは、泳いてサカナを捕ることができないので、弱って浮き上がったサカナを主食としている。そのサカナが病気だったら、どうだろう。トラウトはウイルス性の病気が多く、場内で感染発病しないように、各池を独立注排水したり、施設に入る時には手足を消毒したり、細心のの注意をはらっている。なのに病気のサカナを食ったゴイサギが、他の池に行ってゲロしたら、どうなるのだろう。まったく魚病が、発生していない養魚場に、他の養魚場の病気のサカナを、腹いっぱい食べて来てゲロしたら・・・・恐ろしい。

ゴイサギは夜になると、ネコのように行動する。ネットを張っておいても、一度地上に降りて、隙間を捜して進入して来る。まさしく養魚場のサカナを捕るために進化したトリ、養魚場の天敵である。KFSでも、トラウトのふ化は室内で、餌付けはビニールハウスで。10cm位までは、ネットで隔離した養殖池で飼っているが、それ以降は無防備に近い。特に釣り池に関しては、対策の仕様も無い。希に、体側に2本の筋が付いたレインボーが釣れることがあるが、あれはゴイサギのくちばしに、挟まれて食べられそうになったものの、かろうじて脱出した時の傷だ。


●12/17 鳥による被害は、養魚場でも深刻だ。自然界よりもサカナが密集している分、捕りに狙われやすい。例えばKFSの場合、飛来して来るのは、ゴイサギ、コサギ、アオサギ、カモメ、カワセミ等だ。ヤマセミが毎朝、朝食に来たこともあった。あの小さなセキレイも稚魚を食べる。この中で、問題児は昼間飛んでくるコサギと、暗くなると、やって来るゴイサギだ。
ゴイサギは凄いぞ。腹一杯食べると、ゲロして、また食う。時々、KFSに溶けかかったイワシが落ちていることがある。海で食べたイワシをKFSで吐いて、レインボーを食べたのだろう。屋根の上で干からびたザリガニを発見したことがるが、ヤツらの仕業に違いない。

毎晩、20羽のゴイサギが来て、1羽当り、10匹のレインボーの稚魚を食べたとすると、1年間の被害匹数は・・・?
そう、約70000匹!!これではゴイサギの餌付けをしているようなものだ。ところがゴイサギによる被害は、サカナを食べられる以外に、もっと深刻な問題がある・・・さあ、何でしょう? 答えは掲示板へ。
伊豆の海岸や狩野川には、何百、何千羽ものゴイサギのコロニーが、いたるところにある。ちょっとスゴい話である。


12/6 今年は狩野川のアユが下るのが早いらしい。
伊豆湯ヶ島でアユの養殖を営んでいる、同業者の話だ、彼はKFSのファンでもある。

海産アユの遡上が多い狩野川は、他処に比べると、遅くまで友釣りができる河川として知られている。
例年だと修善寺より下流は11月の文化の日(3日)までは、けっこう混むし、23日の勤労感謝の日でも
まだ友釣りをしているし、その後も見かけることがある。ところが今年は、11月に入って寒い日が続いた
せいか、11月10日頃には、スッカリアユが姿を消し、まったく釣れなくなったというのだ。
ご都合主義の私とこの同業者は、こう考えた。
そうか、釣られる前に下流に下って卵を産んだとすれば、多くの稚魚が海に降るから、来年の駿河湾は
海産稚アユが豊漁かもしれないぞ。
今年は、駿河湾の海産稚アユが、ほどほどに採れて、静岡県のアユ業者は、アユ養殖受難の中にあって
もなんとか商売になった。
さあ、柳の下に2匹目のドジョウならぬ、アユはいるのか?

同じ結果であっても、期待が大きすぎるとショックもデカいことに、この歳になって気が付き始めている。


●11/6 冷凍アユは 生アユと比べると 安い上に1匹づつビニール袋に入っていて、いつでも冷凍庫から出して調理できるので 人気がある。もちろん 生のアユよりは品質がおちるのだが、アユを食べ慣れていないヒトには判らない。というか 冷凍アユがかなり浸透しているので、それを食べて やっぱり養殖アユはまずいと 判断されるのも恐い。1970年頃から増え始め80年代には全国で3000〜4000トンを生産したこともあり、完全に商品として定着した。
それが今年は全国で400トンしかできないと聞く。
5〜6年前 同じようなことがあり、冷凍アユの価格が暴騰した。需要と供給の関係で、値上げも仕方ないと判断した業界だったが、不景気 デフレの世の中には受け入れられず、アユは冷凍 生に限らず 売れなくなった。多分メニューからはずされたということだろう。
実は世間は アユが無くても な〜んにも困らなかったのだ。
おバカな業界も さすがにこの現実に気がついたのか、史上最低の生産量にもかかわらず、値上げは最小限に留まった。しかしこの時代に値上げである。公務員の給料が下がり、今までなんとなく値上がりするのが当然と思っていた公共料金さえも上がらない時代に。ますますアユ離れするのは明白だ。ただ、これでアユ業界がダメになるとは考えられない。さらに大手が淘汰され、30年前の生産レベルに下がり、アユはスーパーに並ばず、地場消費のみになったとき、生き残った養魚場は かろうじて生活できるくらいの経営ができるようになる。

●11/1 今週は毎日 残ったアユを冷凍する作業をした。
うん悪く 先日より急に気温が下がり、氷でしめたアユを1匹づつ袋詰めする作業は けっこう冷たい。とはいうものの 10年程前までは この作業がクリスマスの頃まで続いていたこともある。
いずれにしても これで今シーズンのアユは全て終了となり、私が住んでいる韮山町にあるアユの養魚場は、揚水ポンプを止め、シーンと静まりかえっている。
来週、養殖池を高圧洗浄機で そうじをして、カルキで消毒。ビニールハウス内や物置を片づけて冬眠?に入る。
年末か正月そうそうに アユかレインボーの稚魚を飼うようになるまでは、一滴の水も無くなり、施設全体が天日乾燥され 消毒済み?となる。
アユの養魚場は ほとんどのところが 同じような形態で 一年に2ヶ月程 施設を休ませることができるので、病気を翌年まで持ち越すことは無い。
ところが、最近では 天然の稚魚がいろいろな病気を持ったっま 入池してくるので、結果的には上記のことが あまり意味をなさなくなってきている。自然界は休まないし。

●10/23 毎年 この時期になると、中学生の職場体験や会社見学等がある。
KFSの養魚場にも 昨日が4人、今日が2人来た。明日も2人来る。
中学2年生にやってもらえる仕事というのは そんなにない。外の仕事だから やたらなことをやらせると、けがをしたり 池に落ちたりする。数人でやっている養魚場なのに、彼らの世話で ひとり取られてしまう事態に陥ることもある。
今日は 午前中アユの冷凍作業があったので、それを手伝わせた。アユを1匹づつ細長いビニール袋に入れるのだが、けっこう器用にこなす。昼休みの前後30分づつは、釣り池のまわりのゴミ拾いをさせ、そのあとは釣りの実地体験だ。生徒も喜ぶし私も楽なので、毎年こうなる。この情報が 学校で漏れるのか、KFSの職場体験は希望者が多いらしい。
明日は第4木曜日で定休日。釣り池のそうじをするので、中学生でも充分に手伝えるし、貴重な体験となるはずだ。
しかも、午後は釣り・・・仕事って 簡単だな〜、大人っ楽しんでるよな〜と、彼らが本気で思っても、私は気にしない。

●10/16 アユの冷凍作業が忙しい。といっても 量的には 10数年前と比べれば3分の1もないのだが、スタッフの数も同じ割合で減ったので、作業にかかる日数は同じくらいだ。
予定では 今頃アユはすべて終了して、私は休みになっていたはずなのだが、先月初めからアユの育ちがとっても悪い。とにかく エサをたくさん食べてくれない。
アユはシラスの状態で入池して、大きくなった個体から順番に出荷していく。
例えば、今年の例でいくと 最初30〜40万尾いたアユを 大きくなった順に売っていくと、今残っている大きくなれない4万匹のアユは、全体の10%くらいとなる。やはり これくらいは先天的にあまり大きくならない因子を持っているのか。それとも ここまで飼っている間に成長過程で 何かが起こったのか?
今年は円安とペルー沖のアンチョビの不漁でエサが高騰した。どういう訳かエサが値上がりするときは、必ずエサの質が悪くなるような気がする。
アユが育たない原因は はっきりしないが、狩野川のアユも 相変わらず15〜18cm位の小さなのばかり釣れるようだ。
どちらも生まれは駿河湾だ。
明日はいばらきに視察。帰りが遅くなるので、日記・漁場調査とも 休みます。

●10/13 今朝 近くのアユの養魚場の方が、アユをどうしても1500匹分けてほしいと来た。
狩野川はまだまだアユの友釣りができる。養魚場としては これから寒くなると冷水病が出やすいので、最低量の在庫を残して、余分なアユは始末したい。で、本当のところは早くアユが終わってくれないかな、なんて思ったりもしてしまう。しかし、解禁当初から アユを買っていただいているオトリやさんには、最後までアユを間に合わせたい。で、今ごろになると 上記のような事態が発生することになる。
KFS周辺のアユの養魚場は 5〜6件あるが、どこも水温が低いので 今頃になるときびしい。
私のところは水温が21℃の地下水で、しかもビニールハウスになっているので、アユにとっては いつまでも夏だ。
余ったアユは、何回も書いたが 手間をかけて 冷凍する。今年は相場が高いが、それでも こうして活魚で少しづつ売れば、倍の価格で売れる。あと3週間くらいは 狩野川は夏の盛りと同じくらいの釣り人が来る。
おとりアユが売れる期間が、他の地方より倍近いので、この辺りのアユ業者は 生きていける。

●10/6 台風で河川が増水すると、養殖池にはゴミだけではなく小石や砂泥等も流れ込んでくる。養魚場の最上流までは、水は水路を勢いよく流れてくるが、養魚場に入ると池の巾が広がるので流れはゆるやかとなる。すると、ある程度の重さのある砂の粒子が沈殿し始める。上流部の池には大粒、下流に行くに従って 粉のように細かくなる。この沈殿する土砂の量は ハンパではなく、ひどいときはみるみる池が浅くなってしまう。サカナが泳げるところが だんだん狭くなり、限界を超えれば 池があふれ逃げ出す。しかも下流へ水が流れなくなり 被害が大きくなる。台風で養魚場が被害を受けるというのは このパターンが多い。もちろん巨大な土石流が発生して一瞬にして 池もサカナも埋まってしまうこともある。その時は人間の命の問題で人力ではどうしようもない。
かつては、台風で川が増水すると、今まで捨てられず困っていた産業廃棄物を流す悪者がいて、KFSでも30年程前 上流の工場がどさくさで捨てた工場廃液が土手を乗り越えて濁流と共に流れ込み、10数トンのサカナが死んだことがあった。

●10/5 トラウトの養殖池は 上流から下流へと池が並び、順番に水が流れて行く。各池の連絡水路には くし状のフィルターがあり、水は通るけどサカナは通れなくなっている。そのフィルターの隙間は 大きいサカナの池で15mm位、小さな稚魚池では3mm〜5mm位だ。台風の濁流は 山の落ち葉やゴミ等がいっしょに流れてくる。当然このフィルターの隙間より大きなゴミは、そこに詰まり 水が通りにくくなるので、台風の最中はもちろん、過ぎ去っても、水が澄むまでは 繰り返しそのゴミを上げなくてはならない。重労働だ。
KFSのトイレの後ろにゴミ取る機があるのを ご存知だろうか。養魚場の最上流には、あのようなゴミとり機が設置されているが、場合のよっては ゴミ取り機の能力を上まわったゴミが流れてきてしまい 役に立たない。もちろん 風で池に直接落ちてくる木の葉には 何の対抗手段も無い。KFSでも かつて河川水を使った大きな養魚場を所有していた頃は、手伝いに行くのはもちろん、近所の方や建設業者にも来てもらって、2日も3日も雨の中での作業が続いたこともあった。
KFSの養殖池のほとんどは、一池ごとに注排水することによって、各フィルターを通る水量が極小なので、台風でも排水がつまってしまうことはまったくない。

●10/4 台風は養魚場にとって 天敵であることは、いつか書いた。
KFSのように100%湧水のところは あまり心配がないが、河川水を使っているところは 大変である。河川水を使っているといっても、川の水が直接入っている訳ではなく、200〜300m上流に取り入れ口を設け、水量を調節するための可動式の水門を作る。そこから水路で養殖池に注水し 落差を利用して もとの川に排水するのが基本だ。
大雨が降って本流が濁流となったら、取り入れの水門を閉じればいいと思いがちだが、それではサカナがすぐに死んでしまう。じゃ いつも通りの水量ならどうか。それでいいのだが、実際には増水によって 水圧が上がっているので、こまめに取り入れ口の水門を調節しなくてはならない。すぐ 隣りを濁流がキバをむいて流れているのだから、命懸けの作業だ。もちろん養魚場には茶色に濁った水が入ってきて サカナはまったく見えなくなる。しかしそんなことでは サカナは死なない。そのまま台風が過ぎ去るのを待っていればいいのだが・・・実際には毎年どこかで養魚場が被害を受ける。
どうしてでしょう。

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